眩しい世界の中で
私にはこの世界は眩しすぎる。



この世界には山ほどの人間が存在している。優しい人、優しくない人、派手な人、地味な人、頭がいい人、頭が悪い人、運動が出来る人、できない人、この世界には山ほどの人間が存在している。価値観や、考え方、感じ方は人それぞれだから、その人の好きな食べもの、趣味、特技、好きな色、嫌いなものを全てを把握していたとしても、その人がどういう人かはその人自身にしか分からないかもしれない。この人はこういう人なんだよ。と誰かが言っても他の人から見たらその人は違う人に見えるのかもしれない。価値観や、考え方、感じ方は人それぞれだから。この世界は面白い。この世界は可笑しい。この世界はつまらない。この世界は眩しい。




自由奔放、天真爛漫。それが俺からみた彼女の第一印象。




高校1年。入学式を終えてからもう2ヶ月を過ぎようとしていた。


「太陽〜今日は私達と遊んでよ〜」
「ダメ!うちらの方が先に誘ったんだから!」
「はぁ〜?うっせよ!ブス!」
「ざけんなよ!テメェ〜!私がブスだったらおめぇーは・・・」
クラスの女の子達が太陽を囲み騒いでいる。
「分かった。分かった。じゃ皆で仲良く遊ぼっか。」


女は好きだ。可愛いし、いい匂いだし、柔らかいし、俺が欲しい物をなんでもくれる。俺は幸いにも女受けする顔に生まれてきた。自分で言うのもなんだが、顔良し、スタイル良し、おまけに父親が医者で母親が弁護士。つまり金持ち。三種の神器(?)が揃っている。俺の人生は最高。だけどつまらない。


「太陽!帰ろうぜ!」
「今日雨降るらしいよ」
巧と雅人が傘を振り回しながら太陽に駆け寄る。その後には、春斗が歩いている。
「まぢで?傘なんか持ってきてねーよ」
「じゃ私と相合傘しよ!」
「何言ってんの?私とに決まってんじゃん!」


春斗、巧、雅人の3人は親友。春斗は物心つく前から一緒にいた。つまり幼馴染ってやつ。巧と雅人は中学から。4人でずっとつるんできた。俺ら4人は、顔が良いからとにかくモテる。中でも俺と春斗は学校で1、2を争うイケメンらしい。俺らは何でも手に入れてきた。それは、幸せなことだし楽だ。でもそれだけ、面白くも楽しくもなんともない。つまらない。だから俺らには俺らの楽しみがある。



「ねっねっねっ!太陽!」
巧が何やら面白い物を見つけたかのような顔で無邪気に太陽につめよる。
「なんだよ。朝から元気な子だね〜。」
「あのさ、あのさ、昨日聞きそびれちゃったんだけど!転校生が来るって本当?」
「本当。昨日たけちゃん(先生)が言ってた。」
「へーこの時期に転校生って珍しいね。親の都合とかかな〜?」
雅人が考え深く言った。
「それはわかんねぇけど、女らしいよ!」
「まぢでぇ〜?!」
巧と雅人が嬉しそうに叫ぶ。
「ねっねっねっ!可愛い子かな〜?可愛い子がいい!」
「確かに!あ、でも俺可愛い系より美人系の子がいいなぁ〜」
「美人ちゃんか〜!美人ちゃんもいいね!」
巧と雅人はどんな女の子が来るのか期待に胸を膨らませながら交互に希望を言いあう。
「あんまり期待しない方いいんでね?こういうのはくっそブスな奴が来るってオチだよ。」
太陽は鼻で笑いながら言った。
「あ〜確かにありうる。」
「そんなのわかんないじゃん!可愛い子が来るに1000円!」
「ブスな子が来るに1000円。」
「ブスに1000円!」
「可愛い。1000円。」
巧と春斗が可愛い、太陽と雅人がブスに賭けをした。



「よーし!みんな席につけ!そこうるせってば!黙れって!」
朝のホームルームが始まり、たけちゃんが指揮をする。
「よし!皆おはよう!昨日から言ってたが、今から転校生を紹介しまーす!」
「入っていいぞ〜」
誰も入って来ない。
「あれ?藤井海桜〜入っていいぞ〜」
再度呼びかけたが、それでも誰も入って来る気配がない。
クラスが沈黙する。沈黙を破ったのが太陽。
「ふっ、たけちゃん嫌われた?」
「たけちゃんだっせー」
クラス中が騒ぎ出す。
「う、うるせ!」

たけちゃんはドアから顔を出し、廊下を見た。見回した。だがいくら見ても誰もいない。

「あれ?・・・可笑しいな。いや、確かににここまで一緒に来たはず。」
戸惑うたけちゃんを他所に太陽が冗談まぢりに言った。
「えっまさかのお化け?」
太陽のその一言にクラス中がどよめき出した。
「は?まぢかよ??」
「嘘だろ?笑えね〜」
「え、普通に怖いわ。」
「な、なわけねーだろ!ちょっと探してくるから、自習な!」
たけちゃんは教室を飛び出した。



暑い。もうすぐで春が終えようとしている。海桜は、職員室をたけちゃんとでた。職員室を出てすぐの階段を上り、真っ直ぐに伸びた静かな廊下を歩く。誰もいない。朝のホームルームが始まったからだ。ひんやりと心地のいい空気。たけちゃんは1-Aと書かれた表札のある教室のドアの前で止まった。

「今日からここがお前の教室だ。少しここで待っていてくれ。」
「はーい!」

たけちゃんが教室に入った後、海桜は窓の外を見た。裏庭1面に広がる桜の木。桜の花びらは散り、青々とした葉が生えている。海桜が眺めていると目の前を何かが横切った。ひらひらと舞い、綺麗な澄んだ青色の羽。蝶々だ。海桜はその蝶々に惹かれ小走りで後を追った。蝶々が上へ行く。見失わないようにその後を追いかけるため、海桜も階段を上る。


「見失った。蝶々はどこに行ったの〜?・・・。とりあえず上に行ってみっか!」
海桜は、階段を上へ、上へとゆっくりと上がった。やがて最上階に繋がる階段の前で止まった。ロープの紐がその階段の右の手すりと左の手すりに繋いであり、通せんぼになっている。そしてそのロープの前には(立ち入り禁止)の看板がある。海桜はそのロープをくぐって上がろうとした瞬間。後ろからどなり声が聞こえた。
「こんな所に居たのか!」
海桜は後ろを振り返る。息を切らして怒った顔を見せるたけちゃん。海桜は笑った。
「先生!どうしたの?」
「どうしたの?じゃねーだろ!教室の前で待ってろって言っただろ!」
「あ、そうだった。ごめんなさーい。」
「ったく。ほら戻るぞ!クラスの奴らがお化けじゃねーかって騒いでんだからな!」
「あはははは!そんなわけないじゃん!」
海桜はお腹を抱えて笑った。
「笑い事じゃねー!ったくふらふらとほっつき歩きやがって。」
「ごめんなさーい!」



「改めて紹介する!入ってくれ〜!」
たけちゃんは教卓の前に立ち皆に聞こえるように言った。
「はーい!」
海桜は元気よく言いながらクラスに入ると海桜の容姿を見て皆はざわめきだす。
「え!めっちゃくちゃ可愛んだけど!!」
「フランス人形みたい。」
「やべー。惚れた〜。」


「藤井海桜です!宜しくお願いしまーす!」
「じゃ藤井は太陽の後ろの席空いてるからそこに座ってくれ!」
たけちゃんは太陽の後ろの席を指さした。
「太陽?お天道様?」
海桜はキョトンとした顔を見せる。
「違う。あいつだ!」
たけちゃんは全力で太陽を示した。そんなやり取りを他所に太陽は春斗達の賭けを思い出し、
「・・・。負けた。」



「ねー海桜ちゃんって彼氏いんの?」
「どっから来たの?」
「なんでこんな時期に転校になったの?」
「あはははは!皆質問多すぎ!答えられないよ」
「はいはーい、俺の質問にだけ答えて〜」
「うるせーよお前。」

ホームルーム後、直ぐに海桜の周りにはクラスメイトが集まった。太陽は自分の席に居ずらく教室前方のドアの前に立っていた。
「太陽〜!来・た・よ♡」
巧は太陽の肩に飛びつきながら言った。
「転校生どこー?」
雅人が教室をのぞき込む。その後には春斗がいる。
「ハイエナ共が群がってる所。」
「見たい見たい!転校生ちゃん見たい!」
巧がぴょんぴょんとはねながら中に進む。
巧と雅人の存在に気づいたクラスメイトは道を開けた。
「え!めっちゃ可愛いじゃん!」
「まぢでー?うそ。」
海桜の容姿を見た巧は嬉しそうに雅人は残念そうに言う。
「え〜巧君も可愛いよ!」
「今日もかっこいいねー!」
女子達は2人に騒ぐ。
「え、まぁーね!」
巧は太陽と雅人の方に行き2人の肩に腕を回した。
「これで俺と春斗の勝ちね!」
「・・・。」
太陽と雅人は何も言えない。
「なになに〜なんのこと?」
クラスの女子が4人のやり取りに入ろうとする。
「んんん!なんでもない!」
「えー巧くんの嬉しそうな顔可愛い!写真撮ってぇー!」
「いいよ!春斗も!」



「海桜ちゃん!宜しくね!」
「宜しく〜!」
「改めて宜しく!」
巧と雅人、太陽が海桜の前に立ち挨拶をした。海桜は笑顔でそれに返す。
「うん!よろしくー!」


藤井海桜か。なかなか可愛いな。コミュ力もあるしクラスにもすぐ馴染んでる。次のターゲットはこの子かな?



「あー、1時限目から体育って!。さぼる?」
「いいねぇ〜!」
「え〜一昨日もうちらサボったから流石にやばいよ!ゴリ(体育の先生)ご立腹〜」
「ゴリってうけるー」
海桜はクラスの中でも特に目立つ女子のグループといた。
「だよね〜。ちぇ〜しょうがないから出ますか!」
「そうだね〜」
『キーンコーンカーンコーン』
「げ、チャイムなった!急げ!」
「やばっ!うちら着替えてもないじゃん」
「急げ〜!」
女子達は走りながら講堂へ向かう。


「あ〜遅刻か〜。ゴリご立腹〜。」
「あれ?海桜は?」
「あれ?どこいった?」
「トイレかもよ?」
「あ〜なる〜。」
「先いくか!」
「だ〜ね!」



「体育なんてやってらんなーいよ。保健室にいこーと。あ、でも教室にイヤホンあんだった。先教室か。」
海桜は、真っ直ぐに伸びた廊下を静かに歩いていた。気持ちがいい。誰もいない静かな場所。落ち着く。海桜がそんな事を考えているうちに1-Aの教室に着いた。誰もいないはずの教室から声が聞こえる。
「ははーん!さては誰かサボってんな!驚かせてやろ〜!」


「おい。」
太陽は3人に呼びかけた。
「ん?」
「次のターゲットは、藤井海桜だろ♡」
太陽の言葉に巧と雅人は生き生きした顔でこたえる。
「やっぱし?いいね〜!」
「ん〜春斗かなー?春斗に5000円。雅人は太陽ね。」
「えーちぇっじゃー仕方ねーから太陽に5000。」
「おめぇーなぁ。 絶対俺が勝つに決まってんだろうが。」
「いや、俺だね。」
3人のやり取りを静かに聞いてた春斗が答えた。
「あの手の女は俺に惚れる子の方が多いって!」
すぐさまに太陽は反論する。
「それはない。」
春斗は素っ気なくそれに応えた。


俺らの楽しみは、俺と春斗どっちが多くの女をおとせるか。これは中学の頃俺と春斗が告白された数を競い合ってたのが原因。それを面白がって見ていた巧と雅人が俺か、春斗かで賭けを始めたのが始まり。俺はともかく。春斗は女が好きかどうかと言ったらどっちかというと嫌いな方。だけど、クールなくせに負けず嫌いな所があるから春斗もその気になって女をおとしはじめる。これがまた実に鮮やかで、嫉妬する。


「確か、うちのクラスの桜井太陽。別のクラスの遠藤巧。庄司雅人。須陽春斗。か。ふーんなるほど。桜井太陽と須陽春斗のどっちかが、私をおとすゲーム的な?ありきたりすぎる。」
海桜は教室の外で聞き耳をたて4人の会話を聞いていた。
「無理でしょ。」
と、鼻で笑いながら海桜は教室を後にした。
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