セカンド・プライオリティ
言葉が足りないことは自覚している。
しかし…だ。

「何が足りないんだ…」

今まで言葉にしてこなかったことを、言葉に変えて伝える。
でも言葉にしてこなかったことって、なんなんだ?

考えれば考えるほど思考回路は迷宮入りで。
言葉に変えるべき、自分の気持ちがわからない。

「んー…」

それなら、美己を安心させてあげられるような何か?
それとも、美己の思いを引き出してやれるような何か?

ああでもないこうでもないと考えながら、なんとなく過去のメッセージへと画面をスクロールしていく。

”ごめん”
”気にしないで”
”無理しないで”

…いつからだ?

そこにあったのは、同じようなセリフばかりで。
それら全てが想像させるのは、美己の悲しそうな表情ばかりだった。

「こんなことにも気が付かなくなってたのか、俺は」

何も言わなくても大丈夫。
だって言わなくても、わかるから。
わざわざ言葉にしなくても、伝わるから。

…だって、一緒にいるだけで、幸せなんだから。

お互いにそう思っている、同じ気持ちで一緒にいると。

だけど、美己がそう言ったのか?
それこそが俺が足りていなかったところ、美己に甘えていたところなんじゃないのか?
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