セカンド・プライオリティ
「はい、お待たせ」

ふわふわに焼き上げたパンケーキのサイドに簡単に野菜を盛り付け、颯の好きなチーズを入れたオムレツをその横に添える。

「ちゃんと野菜も食えよ」
「って言いながら、俺が比較的食べれるパプリカのサラダにしてくれるあたりが優しさを感じる」

ま、本当ならいい歳して野菜嫌いの颯に情けをかける必要なんて皆無なんだけど…

「…なんか話あるなら聞くけど」
「まじですごいなお前」

今日の颯はただ仕事で疲れているというわけではなさそうだったから、今日は特別。

「麻子に彼氏が出来た」
「は?」

麻子ちゃんというのは颯の幼馴染で。
女をころころと変えていた颯が、最近になってようやく本気だと認めた女性の名前だ。

「相手は?」
「同じ会社の上司だって」
「それでいいの」
「や、よくない…けど」

普段じゃ考えられないように戸惑った表情を浮かべて言葉を濁す颯の姿は、俺でもあまり見たことがないくらい小さく見えて。

「けど?」
「なんかさ、嫌だけど。麻子には麻子の人生があって。アイツが選んで決めたことに俺が口出しする権利なんて、どこにもないんじゃないかと思って」

ゆっくりと気持ちを外に絞り出すように紡がれる颯の言葉には、何か葛藤のようなものが感じられた。
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