君と見つける、恋の思い出


……不思議に。



当然思った。


叶花が、自分自身が嫌いな空気を作り、怒ったこと。



「叶花ちゃんがそうしたのは、蓮くんのためなんだって」


「は?」



理香子さん相手だというのに、素でそう言ってしまった。



叶花が怒ったのが、俺のため?



どうしてそうなる。



一つも、俺のためになっていない。



「叶花ちゃんは、自分がいなくなったあとの、蓮くんの人間関係を気にしてたの」



頭が真っ白になった。



声のトーン的に、理香子さんが本当のことを言っているというのは、すぐにわかった。



だけど、信じられなかった。



「叶花ちゃん、昨日言ってた。蓮くんは、長い時間を私に使ってくれた。お父さんとのちょっとした約束で、十年も隣にいてくれた。蓮くんは、優しい人なの。でも、誰もそれを知らない。だから、私の蓮くんに出来る恩返しは、本当の蓮くんをみんなに知ってもらうことなんだって」
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