君と見つける、恋の思い出


理香子さんは、俺の考えは聞いていないはずなのに、そう言った。



そういうことって、どういうことだよ。



「叶花ちゃんは、蓮くんに態度を変えてもらいたくなかった。残された時間を、そのままの蓮くんと過ごしたかったんじゃないかな」


「それでも俺は、言ってほしかったです」



俺はなんだか悔しくて、握る手に力が入った。



「櫻木さん!」



すると、杉崎さんが慌てて俺たちのところに駆け寄ってきた。



「叶花さんが、目を覚ましました!」



俺と理香子さんは同時に立ち上がったが、俺はまた座った。



「蓮くん、行かないの?」


「……今行ったら、叶花を責める自信しかありません。少し頭を冷やして行きます」



俺の言うことを理解してくれたのか、理香子さんは俺を置いて叶花のところに行ってくれた。



一人になり、冷静に頭の中を整理していく。



今の中で一番大切なことは、叶花があと少ししか生きられないということ。
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