君と見つける、恋の思い出
数十分後、誰かが入ってきた。
だが、俺は気にすることなく、読書を続ける。
「……誰?」
聞いたことのない声だった。
冷たく、女性にしては低い声。
俺は本から顔を上げる。
「そちらこそ」
そこにいたのは、見覚えのない看護師がいた。
見たところ若いから、新人か。
「杉崎です。そちらは?」
「浅賀です」
名乗られて、名乗らないなんて失礼なことはしない。
「浅賀?」
すると、杉崎さんはすべてを言わずに首を傾げた。
あー……
「浅賀瞳の息子です」
こういうことだろ。
言いたいのは。
彼女は納得したような顔をしている。
で、これは直感だが……
優秀な新人って、彼女だな。
雰囲気とか見た目的に、出来る人だっていうのが伝わってくる。
「それで、櫻木さんは?」
「どこか行きました」
本に視線を戻す。
怒るんだろうな。
仕事が滞る……みたいなことで。
「そうですか」