冷たい幼なじみが好きなんです
「え…ずっと嫌いだった…?なにか怒らせるようなこと、したのか?」
驚きつつも、どうせしたんだろ?と前提のような言い方の竜。
うん、そうなの、どうやったら元に戻れると思う?と言えたらわたしの気持ちも今よりどんなに楽か。
決して楽じゃない。だってまさか……嫌われてるなんて、思いもしなかったから。
「怒らせるようなことっていうか……わたしのこと、うるさいって、うっとうしいって、ほんとはずっと思ってたみたいで……さ」
わたしと遥斗は一緒に登校しようと約束してるわけじゃないけど、時間がかぶったらたいていふたりで登校していた。
ゴールデンウィーク明けの朝も、家を出るとたまたま遥斗と同じタイミングだったから、いつもどおり「遥斗おはよ!」と元気よく声をかけて笑顔でかけよった。
だけど遥斗はわたしのことを無視して歩き出してしまった。
朝からなにか機嫌の悪くなるようなことでもあったのかなと思い「どうしたの?」と背中を追いかけると、返ってきたのは冷たい目線と「近寄るな」という拒絶の言葉だった。
それから……わたしのことをずっと嫌いだったと、うるさいと、うっとうしいと言われてしまい……。
わたしは一気に心が氷のように凍ってしまった気がした。
だって、冗談とかではなく、本気の様子だったから。
それ以上話しかけることができなかった。近づくことができなかった。驚きすぎて、ただただ呆然と立ち尽くした。
そしてわたしたちは話さないまま──現在に至る。
「まじかよ…」
わたしのはなしを聞いた竜の表情は、わたしの予想とは少しちがうものだった。
ふつう、驚いたり、困惑の表情を浮かべるはずなのに。
竜は、さほど驚いていない様子だった。