冷たい幼なじみが好きなんです


「は……?なに泣いて………」


遥斗は驚いた声をあげる。

わたしも、自分自身驚いている。

泣いたらだめ。変に思われる。はやく止まれ。涙、止まれ。

だけどまったく、コントロールできない。

コントロールできないどころか……


「……っ“あんなもん”じゃない……!どうでもいいわけない……!あの時計は遥斗がくれた、大切なものだもん………っ!!」


涙と一緒に、本音まで、口からこぼれ落ちた………。


何度も何度も手の甲で大粒の涙をぬぐう。

だけどまったく止まってくれる様子はない。


「………なんなんだよ、お前」


遥斗はあきれてるのか、驚いているのか、よくわからない口調でつぶやいた。


こんなにも涙を流しているのは、一体何歳ぶりだろう。

この公園で派手にこけて、膝を大きく擦りむいて大泣きしたこともあった。

『痛いの痛いの飛んでけー!…ほら、笑、もう痛くないでしょ?』

遥斗にもそんなおちゃめなことを言う時期もあった。

『笑、もう泣かないで?』

そう言って涙を拭ってくれて…………



「……そうやって泣くのは、俺の前だけにしろ…」

ゆっくりと大きな手が伸びてきて…………優しい手つきで、わたしの涙をすくった………。

< 114 / 192 >

この作品をシェア

pagetop