冷たい幼なじみが好きなんです
「遥斗………なんでここに………」
すぐに疑問が口をついて飛び出した。幻覚じゃないよね?本物の遥斗だよね?
「…おばさんから電話あった。心配してるぞ」
「お母さんが……?」
「いったいなに探してんだよ」
それもお母さんが言ったのだろう。
遥斗はわたしと少し距離をあけ、わたしと同じ向きで同じように座り込んだ。だけど、体の大きな遥斗はわたしよりも狭苦しそうだ。
「………とけい」
ポツリと呟いた。
「……時計?」
「遥斗からもらった、時計………。でも、見つからなかった………」
「………」
暗闇のなか必死に探したのに。
もう明日になっても見つからないかもしれない。
だれかに拾われて、どこかに持っていかれたかもしれない。
川に落ちてしまったかもしれない。
車やバイクに引かれて粉々になっているかもしれない……。
わたしが落としさえしなければ、こんなことにはならなかった………。
「…………あんなもん、どうでもいいだろ」
隣に座っている遥斗が、吐き捨てるようにつぶやいた。
わたしはその言葉に…………
自分でも抑えきれないほど、鼻の奥がツンとして………ぶわぶわと涙が込み上げてきた。
大きな雫が、頬をつたってトンネルのなかにポタンと一直線に落ちた。