冷たい幼なじみが好きなんです
そこには遥斗が立っていた。わたしのベランダに立っていた。自分のベランダから、うつってきていたのだ。でないと、この窓をノックすることはできないだろう。
ガラガラ…
電話をかけてきた上に、二度もノックされたのだ。仕方なく開けるしかなかった。
用が済んだらすぐに閉めよう。この窓もカーテンも。
わたしは今すぐ、眠りにつきたいんだ。
「……これ、やる」
手渡された、小さな紙袋。そのなかには、箱が入っていた。
紙袋も、箱も………見覚えが、あった。
わたしは頭のいい遥斗とちがって、記憶力なんて低いはずだ。
だけど今わたしの視界に映るのは………一年前に見たものと、まったく同じ物だと確信できていた。
「誕生日、おめでとう、……もう、無くすなよ」
「………っ」
遥斗は………わたしが無くしたあのチャーム時計を、また、買ってきてくれたのだ。
『誕生日、おめでと。これ、やるよ』
『え!?なになにー!?開けていい!?』
『おー』
『……っわあ!時計だあ!!可愛い~!!』
『ちゃんとカバンに付けとけよ』
『うん!!大切にするね!!遥斗、ほんとにありがとうっ!!』