冷たい幼なじみが好きなんです


ちょっとだけ。今だけ。百合ちゃんには見られていないから大丈夫。

そんなゆるい考えが駄目なんだ。

そんな考えをしていたら、………結果、自分が悩み苦しむだけなんだ。


だからわたしはここから動かない。

ベランダになんて出ない。

遥斗は、用もなくなんでもない日にベランダに呼ぶような性格ではない。

ストロベリームーンの日だって、ストロベリームーンのために、ベランダに出てきた。

なぜ今日呼ぶのか。今日はなんの日なのか………答えはひとつしかない。

それはきっと、わたしが喜ぶべき内容。

だけどわたしが今ベランダに出てしまったら、元も子もない。百合ちゃんが傷つくだけだ。

わたしは、遥斗の彼女である百合ちゃんを、傷つけたくない──

──コンコン

着信音とはまたちがう、窓をノックするその鈍い音が、わたしの部屋の静寂を切り裂いた。

──コンコン

また、続く。

「………っ………」

なに………?なんなの………?

わたしがせっかく、決断したっていうのに……!!

わたしの気持ち、知りもしないで……!!

なんだか無性に腹が立ってきて、勢いよくカーテンを開けた。

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