冷たい幼なじみが好きなんです
保健室で休んだ日から一週間経った日のこと。
時刻は夜10時をまわっていた。
二階にある自分の部屋で課題をしていると、母親に呼ばれ一階に降りた。
笑の母親から電話がかかってきているという。
『もしもし遥斗くん?笑が一時間前に家を出てからまだ帰って来てないんだけど、どこに行ったか知らない?』
「…え?」
『なにか落として、探しに行ったみたいなのよ。携帯家に置きっぱなしだから連絡もとれなくて』
「…俺、家のまわり見てきます」
…あいつ、なにやってんだよ。
せめて携帯くらい持って出ろよ。
…心配、させんなよ。
俺は勢いよく家を飛び出したが、笑は思ったよりもすぐに見つかった。
公園の滑り台のトンネルのなかに、その小さな体は隠れていたんだ。
笑はなんと、俺があげた時計を探しまわっていたという。
「あの時計は遥斗がくれた、大切なものだもん…!」
そう言って大粒の涙を流す笑に、ぎょっとした。
「……なんなんだよ、お前」
お前には今、彼氏がいるだろう。
その上、ひどいことを言った俺があげたプレゼントに、なにそんな必死になってんだよ。
「…わたしのこと、見てほしい…笑って呼んでほしい…」
このとき俺は、自分が思っていた以上に笑を傷つけてしまっていたんだと気づいた。
そんなこと言われたら…我慢、できなくなるだろう。
笑には彼氏がいて…俺にも、彼女がいる。
だめだ…こんなこと。
でも、抑えがきかない。
笑が好きだ…………。
言葉にする代わりに……笑の唇にそっとキスを落とした。