冷たい幼なじみが好きなんです
──6月25日。
今日は…笑の17歳の誕生日。
俺は、笑がなくした時計を買った。
夜に家を出て必死に探してくれた笑に、どうしてももう一度買ってあげたかったんだ。
きっと喜んでくれる。
一度『捨てとけば』なんて言ってしまったことがあるが…もう一度、前みたいにカバンにつけてほしい。
だけど思い通りにはいかなかった。
笑は時計を“いらない”と言った。
“あの男からもらったから、もういらない”と。
…………ふざけんな。
俺が笑の唇に無理矢理キスをしたのは、決して怒りからくるものではなかった。
どうしようもないほどの、嫉妬と悲しみ。
すべてをぶつけた。
やっぱりお前はアイツが好きなんだな。
俺のことなんて…ちっとも男として見てくれないんだな。
幼なじみじゃなかったら、男として見てくれただろうか。
笑なんか…幼なじみじゃなかったらよかった。
この日…俺と笑のあいだに繋がっていた透明の糸が、プツリと切れる音がした。