イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

同期のアイツに迫られて


新横浜駅から横浜駅に移動すると、安藤が「穂香、少し飲まないか?」と声をかけてきた。今の時刻は午後五時三十分。少し早い夕食を取って家に帰れば、お風呂に入ってすぐに寝ることができる。

「うん。いいよ」と返事をして、近くの居酒屋にふたりで入った。



「穂香。今回は本当にありがとう」

「ううん。安藤もお疲れさま」

ビールが注がれた中ジョッキをガチンと合わせると、黄金色をした液体を喉に流し込む。

冷奴にきゅうりと茄子の漬物、ホッケの開きに牛タンの塩焼きなどの渋いメニューがテーブルに並んだのは、大人の味が恋しくなっていたから。この三日間で食べたのはハンバーグにカレー、から揚げにオムライスといった洋食メニューばかり。ビールを飲み、さっぱりとした味つけの物を食べる幸せに安藤と浸る。

「安藤。今度蓮くんに会うときは、私にも絶対声をかけてね」

「ああ。わかった」

ついさっき蓮くんと別れたばかりだというのに、もう蓮くんが恋しくて仕方がない。寂しさを紛らわせるようにビールを飲んでいると、安藤の現実的な言葉が耳に届いた。

「明日から仕事だな」

「嫌なこと思い出させないでよ」

今日でゴールデンウイークは終わり。明日から仕事漬けの毎日がまた始まる。

「穂香は仕事嫌いなのか?」

「嫌いじゃないけど、連休明けの明日は絶対忙しいもん」

休み明けの銀行窓口には、たくさんのお客様が来店する。昼食を取る暇もないくらい忙しい明日のことを考えただけで、気分が沈んだ。

「俺も明日は朝から夕方までスケジュールびっしり」

忙しいのは銀行窓口だけではない。営業先を回ってノルマも達成しなければならない安藤は、私以上に大変だろう。

「お互いがんばろうね」

「おう」

珍しく意気投合した私たちは中ジョッキを再びガチンと合わせる。そしてビールを一気に飲み干し、お代わりをオーダーした。

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