イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
自分の幼稚な部分は棚に上げて、私に嫌味を言う安藤に返す言葉が見つからない。思わず黙り込めば、安藤がポツリとつぶやいた。
「俺さ、蓮をダシに使った」
「ダシ?」
安藤が蓮くんをどのように利用したのかがわからず、首を傾げる。
「ひとりで蓮の面倒を見ることに不安を感じたことは嘘じゃないけど……それよりも穂香と距離を縮めるいいチャンスだと思った」
そつがない安藤なら、蓮くんを三日間預かることくらいなんてことないはずだ。それなのに私を頼ってくるのはどうしてだろうと、ずっと胸に引っかかっていた。その疑問がようやく解けて気持ちがスッと晴れた。けれど、安藤にどのような返事をしたらいいのかわからない。
落ち着きなく「そ、そっか……」と答えると、正座をしている私との距離を安藤が詰めた。
「穂香は俺のこと……嫌い?」
私を真っ直ぐ見据えた安藤が、核心に迫ってくる。
「き、嫌いじゃないよ」
「じゃあ、好き?」
『嫌い?』と聞かれたら、『嫌いじゃない』と即答できる。でも『好き?』と聞かれたら、『好き』とは即答できなかった。
「わからない。わからないよ……」
蓮くんを預かることを『子育て』と言い、蓮くんの悪いところはきちんと叱り、いいところは大いに褒める。