イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
徐々に濃厚になっていく接触を思い返しただけで、頬が熱く火照り出す。と同時にふたりの間に気まずい空気が流れた。
このまま安藤を無視して帰るわけにはいかないし、だからと言って世間話をするような余裕はない。
これから、どうしようと悩むこと数秒。安藤が沈黙を破った。
「俺、ずっと前から穂香のこと好きだった……」
「えっ?」
安藤の口から飛び出した言葉に驚き、頭が真っ白になる。予想外の告白が信じられずに、しばらく固まっていると、安藤が心配そうな声をあげた。
「穂香?」
正気に戻った私の頭にある疑問が浮かび、弾かれるようにベッドから降りて、床に座る安藤の前に正座をした。
「ずっと前からって……。えっ? 安藤? いつから私のことを?」
食い入るように安藤を見つめれば、彼は記憶を探るように視線をさまよわせる。
「……横浜支店に配属されてすぐかな」
「う、嘘でしょ?」
衝撃的な安藤の告白をすぐに信じることができなかったのは、彼の好意を身に感じた記憶がひとつもなかったから。
思い出すのは悪態をつき、私をからっておもしろがる意地悪な安藤の姿ばかり。
あれが安藤の愛情表現なの?
好きな子をいじめて喜ぶ小学生みたいな安藤に、少しあきれてしまう。
「嘘じゃないし。穂香って意外と鈍感だよな」
「鈍感って……」