イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

「ああ、おいしかった」

朝陽はそう言うとゴロンと寝転び、私の膝の上に頭をのせる。

甘えられるのはうれしい。けれど今の私の心の中は、申し訳ない気持ちで埋め尽くされている。

「朝陽、ごめんね」

朝陽に謝るのは、もうこれで四度目。一度目はスマホに送信したメッセージ内で、二度目は朝陽がマンションに帰ってきたときに、三度目は私がデパ地下で買ってきたお惣菜をおかずにビールを飲みながら、そして四度目は、まさに今……というわけだ。

「穂香。謝るのはこれでおしまい。な?」

「……うん」

朝陽の気遣いをうれしく思いつつ彼の少し厚めの前髪をなでて、頬に短いキスを落とす。けれど朝陽はそれだけでは満足できなかったようだ。長い腕を伸ばし、その大きな手で私の後頭部をガシリと押さえる。それから上半身を軽く起こし、私の唇に自分の唇をチュッと重ねた。

瞬きする間も与えられなかった短いキスに驚き、目をしばたかせれば、朝陽がほくそ笑む。

甘えを見せたかと思えば、いたずらっ子のような笑みをこぼす。忙しい朝陽がおもしろくて愛おしくて、彼につられるように笑顔になった。

私が謝っても、もう北海道旅行は実現しない。それならば、いつまでもヘコんでいても仕方ない。

気分を切り替えて再び朝陽の前髪をなでれば、彼が思わぬことを言い出した。

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