イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
「なに?」
覚悟を決めると、朝陽の話に耳を傾けた。
『……穂香と距離を置きたい』
私の胸を朝陽の言葉が鋭く射貫く。
朝陽の話は私にとっていいものではないと覚悟の上で聞いたはずなのに、いざとなると激しく動揺してしまう。
「距離を置きたいって……私と別れたいってこと?」
朝陽を責めたいわけじゃないのに、つい強い口調になってしまう。
『そうじゃなくて、ひとりでいろいろと考えたいんだ』
困惑する私とは対照的に、スマホ越しの朝陽の声はいたって冷静だった。
距離を置くことは別れることではないと朝陽は言うけれど、私たちは昨日のクリスマスイブにケンカをしたばかり。
この先、朝陽に会えなくなるのではないかという不安が胸いっぱいに広がり、涙がジワリと込み上げてきた。
「わ、私は……朝陽のこと好きだよ」
『俺だって穂香のこと好きだよ。でも、それだけじゃダメなんだ』
「……ダメって?」
自分の思いを必死に伝えてみても、朝陽の決意は崩れない。それでも朝陽が言う『ダメ』の意味が知りたくて、懸命に食い下がった。
『俺さ……大阪支店で全然結果出せてなくて……。昨日だって穂香と約束あったのに仕事優先させちゃったし、根本課長と穂香が俺に内緒で会っていたんじゃないかって疑ったしさ……』
スマホから聞こえる朝陽の声が、徐々に小さくなっていく。