イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

「根本さんと会ったのは本当に偶然だから!」

昨日、朝陽に聞いてもらうことすらできなかった言い訳を、今になって必死に伝える。

『わかってる。あれは俺の勝手な嫉妬だから。……ごめん』

「……ううん」

誤解は解けたものの、やはり気分は晴れない。

『今の俺って仕事も穂香に対しても中途半端で……。だから自分が納得いくまで、ひとりでがんばらないとダメだって思ったんだ』

朝陽の言葉を聞いて思い出すのは、根本さんから聞いた話。朝陽が大阪支店で苦戦しているというのは、やはり本当のようだ。

がんばりたいという朝陽の気持ちは理解できるし応援したいと思う。けれど納得いかないこともある。

「ひとりでがんばるなんて言わないで……。私が隣にいたら邪魔?」

『穂香の気持ちはうれしいけど……それじゃあ成長できない』

少しでも朝陽の力になりたくて、すがるように朝陽に訴えた。しかし返ってきたのは、私を拒む朝陽の言葉。

蓮くんを三日間預かることを『子育て』と言い張ったように、朝陽は意外と頑固なところがある。その朝陽がひとりでがんばりたいと言うのなら、その考えを覆すことは簡単ではない……。

「……わかった。わかりたくないけど……わかったから」

『穂香。勝手なこと言ってごめん』

精いっぱい強がってみても、涙交じりで『わかった』と言っては説得力に欠ける……。

そう思いながら『距離を置きたい』という朝陽の望みを受け入れた。

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