イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした
部屋の外に青く澄んだ空が広がっているのが見える。けれど朝陽に『距離を置きたい』と告げられた私の気持ちは、今日の天気とは正反対の雨模様。重く沈んだ気持ちのままベッドで横になっていると、部屋のドアがノックされた。
「穂香。入るわよ」
「……どうぞ」
私の部屋に姿を現したのは母親。お昼を過ぎてもだらしなくベッドに横たわる私を見た母親の眉間にシワが寄る。
「穂香。暇ならなら家のこと手伝ってちょうだい」
今日は十二月三十一日の大晦日。主婦である母親はお正月を迎える準備で朝から大忙しのようだ。
私が勤めているよつば銀行は今日から年明け一月三日までお休み。朝陽と距離を置くことになった私の予定はなにもない。けれど母親の手伝いを勧んで引き受ける気分にはなれなかった。
それでも「……わかった」と返事をしたのは、母親に小言を言われるのが面倒くさいから。仕方なくベッドの上で上半身を起こせば、母親が大きなため息をついた。
「ねえ、穂香。ひょっとしてアンタ、彼氏にフラれたの?」
「フラれてないからっ!って、どうしてそう思うの?」
遠慮なく地雷を踏む母親の発言をムキになって否定したものの、すぐにある疑問が頭に浮かび尋ねる。
「だって、クリスマス過ぎてから元気ないから」
母親はそう言うと、ベッドの上で膝を抱える私の隣にチョコンと腰を下ろした。
気落ちしている私の些細な変化を見逃さない母親に心配かけたくない。しかし嘘はつきたくない。