イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

そんなことをボンヤリと考えていると、安藤がスマホの画面を私に向けた。

「これが蓮」

そこに写っていたのはピースサインを出している男の子の姿。屈託のない笑顔を浮かべている蓮くんはとてもかわいらしい。

「うわぁ、かわいい。でもどうして蓮くんを三日間も預かることになったの?」

大きな瞳が安藤に少し似ているなと思いつつ、『子育て』することになった経緯を尋ねた。

「姉貴に急な出張が入ってさ……。あ、俺の姉貴、アパレルのバイヤーなんだ」

「へえ、かっこいいね」

アパレルのバイヤーといえば、生産もとから商品の買いつけをする仕事。銀行窓口で来店客と接する仕事に携わっている私にとって、国内外を飛び回って精力的に活動する人たちは憧れの存在だ。

「そうか? まあ、結婚して蓮が産まれても、仕事を続けている姉貴は尊敬するけどな」

安藤は私から視線を逸らすとストローに口をつけた。

お姉さんの話をした途端、キャラメルフラペチーノを飲み始めたのは照れ隠し?

わかりやすい態度を示す安藤は新鮮だ。思わずフフッと笑みを漏らせば、安藤が私をジロリと睨んだ。

安藤を不機嫌にさせたら、面倒くさいことになる。

小さく笑ったことを誤魔化すように、咄嗟に「んんっ」とわざとらしい咳払いをした。すると安藤が大きなため息を吐き出す。

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