イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

「だから、柴田。俺と一緒に子育てしてくれ」

顔を上げた安藤が、私の目の前で拝むように両手を合わせた。

だいたいの事情はわかった。けれど安藤の『子育て』という言葉が納得できない。

「あのさ、甥っ子を預かるだけでしょ? 子育てとはちょっと違くない? たとえば面倒を見るのを手伝ってほしいとか、言い方があると思うんだけど?」

息つく間もなく反論してみれば、安藤が両手でテーブルをバンと叩いた。

「三日も預かるんだぞ? 面倒を見るとか生温いことじゃない。これは子育てだ。いいところは褒めて伸ばして、悪いことはきちんと叱らないと蓮(れん)のためにならないだろ」

安藤は私に子育て論を熱く語った。

彼は意外と頑固だ。その安藤が甥っ子を預かることを『子育て』と言うのなら、私がこれ以上反論しても聞く耳を持たないだろう。

『子育て』という言葉など、どうでもよく思えた私は、安藤の甥っ子について話題を変えた。

「甥っ子って、蓮くんっていう名前なんだ」

「ああ。画像見るか?」

「うん。見たい!」

普段は私に容赦ないくせに、表情を緩めてスマホをいじり始めた安藤がおもしろい。

甥っ子の画像を保存しているなんて、安藤は蓮くんのことがかわいくて仕方ないんだろうな……。

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