イジワル同期は溺愛パパ⁉ でした

「お疲れさま。ねえ、安藤くん、仕事終わった?」

木村さんが安藤の腕に、さりげなく手を触れるのが見えた。

「いいえ。まだです」

「え~、そうなんだ。この後、一緒に食事に行けたらいいなと思ったんだけど……。じゃあ、ゴールデンウイーク、私とどこか一緒に出かけない?」

ふんわりとしたボブヘアがよく似合っている木村さんが、視線を上げて安藤を見つめる。

普段より少し高い声、さりげないボディタッチ、そしてかわいらしい上目づかい。女子力が高い木村さんが、安藤を狙っているのは一目瞭然だ。

「すみません。ゴールデンウイークはすでに予定が入っているんです。また今度誘ってください」

「そっか……残念」

安藤に断られた木村さんの表情が見る見るうちに曇り出した。

七三分けの髪型に眼鏡スタイルといった行員が多い中、スタイリッシュな安藤を狙っているのは木村さんだけじゃない。

同期だからという理由で『安藤くんって彼女いるの?』と聞かれたことは数えきれないほどあるし、黄色い声をあげて安藤を遠巻きに見つめている女子行員が大勢いることも知っている。

横浜支店の女子行員ほぼ全員が、安藤に好意を寄せていると言っても過言ではない。私は密かにそう思っているのだ。

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