お嬢様は恋をしません。
水野さんはパタパタと走って行った。



「…奏多、覚えとけよ」



「悪いことしたつもりはないんだけどなぁ」




そういうと、時雨は舌打ちして机に沈み込んだ。




「まだ顔赤いよ」



「…うるさい」




しばらくして、チャイムが鳴った。



先生が入ってきて、体育館に連行されて、学校はお昼前に終わった。



スマホを見ると、湊音から『今日俺部活あるから莉緒のこと迎えにきて』とメッセージが来ていた。




確か2人は3組だったか…。




「時雨、彼女と仲良くな」



「…あぁ。…帰るのか?」



「うん。なんか、莉緒が迎えに来いって行ってるからさ」




時雨にひらひらと手を振ると、俺は隣のクラスに向かった。




「莉緒」




教室の前でそう呼ぶと、湊音と話していた莉緒は湊音やお友達に手を振って、俺の元へ駆け寄ってきた。




「おまたせ、帰ろ?」




そう言ってふんわり笑う莉緒には、女王の影なんて一切見えない。
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