竜の姫君
 ぜいぜい、はあはあ。
 肩で息をする。 
 頬が熱い。
 きっとみっともなく赤くなってるなあと思いつつ、エイシェルの顔を見るとこいつはこいつで眉を下げ、何やら泣きそうな顔。

「どうして、そんなに邪険にするの?」

 じわりと潤む青い瞳。
 それはエイシェルがちっちゃな幼女の姿だった頃を思い出させる。
 反則だろ、それ。

「どうしてってね。あたしは厄介ごとに巻き込まれるのはご免なんだよ」

 すでにかなり巻き込まれている気がするが、これ以上はさすがにご免蒙りたい。

「僕って厄介者なの?」

 わかってるじゃないか。
 あたしは思わず大きく頷いてしまった。
 しかし。
 敵はめげなかった。

「わかった。だったら、僕、マルガの役に立てるよう頑張るよっ!」

 両手に握りこぶしを作っての力説である。

「そ、そう。じゃ、まず、ついて歩くの止めてくれる?」
「えっ!」

 なぜ、そこでまたそんな哀しそうな顔をする。
 絆されそうになるだろうがっ!
 けど、ここで釘を刺しておかなければつけあがるにちがいない。
 あたしは心を鬼にする。

「でもって、抱きつくな」
「ええええっ!」

 何でそこでそう驚く。
 と言うか、地面に蹲って大きな背を丸め、のの字を書くほどショックかっ!
 ため息をつきつつ名を呼ぶ。

「エイシェル」

 とたんそいつは飛び上がるようにしてあたしに抱きついた。
 さっき、抱きつくなと言ったばかりだろうがっ!

「離せえぇぇぇっ!」

 またもや全力で暴れるが、今度は離そうとしない。
 馬鹿力でますます抱きすくめられる。
 勘弁してよ。

「やっと呼んでくれた」
「はあ?」
「僕の名」
「いいから、離せ」
「あっ、ごめん」

 やっと離してくれた。
 あたしはまたもや荒い息を整える始末だ。
 胸の鼓動が治まらないのは、単にびっくりしたからに違いない。
 ときめいたなんてことは、ない。
 ないたら、ない。

「立ち入り禁止っ!」
「えっ」
「あたしのまわり三歩以内に近づくな、いいな」

 言い捨ててあたしはまた歩き出す。
 後でエイシェルが固まっている気配がするが、無視だ、無視。
 絶対、無視だ。

< 25 / 25 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

王国ファンタジア【氷炎の民】ドラゴン討伐編
街野遥/著

総文字数/52,306

ファンタジー75ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
平和だった王国に突如訪れたドラゴン……。 国王は、その平和を取り戻す為、多くの戦士に招集をかけた。 王国のはるか北。 人の住まえる北限を超えて彼ら一族の地はある。 銀の髪と蒼き瞳。 氷の神の化身のような姿を持ちながらも、炎を操るという特有の力ゆえに彼らは、こう呼ばれる。 「氷炎の民」と。  そして、彼もその一人……、今、新たな冒険が始まる。 チャイロさま主催のファンタジーコラボ企画 ー出演キャラー 雷電の民:クラウン 森の民:アウル、サハナ 氷炎の民:サレンス、レジィ 癒しの民:グレード、バジル 流浪の民:ベリル ------------- 関西弁監修:風人様 -------------- 規定枚数は60枚、余裕で突破しそうです(汗) 第2部締め切りは2月末。 きっと間に合わない(汗) 2月って28日までしかないし(当たり前だ)。 3月2日とりあえず完結
王国ファンタジア【氷炎の民】
街野遥/著

総文字数/29,810

ファンタジー44ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
平和だった王国に突如訪れたドラゴン…。 国王は、その平和を取り戻す為、多くの戦士に招集をかけた。 王国のはるか北。 人の住まえる北限を超えて彼ら一族の地はある。 銀の髪と蒼き瞳。 氷の神の化身のような姿を持ちながらも、炎を操るという特有の力ゆえに彼らは、こう呼ばれる。 「氷炎の民」と。  そして、彼もその一人…、今、新たな冒険が始まる。 チャイロさま主催の*ファンタジー企画*
王国ファンタジア【氷炎の民】外伝~新生~
街野遥/著

総文字数/27,049

ファンタジー40ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
  王国のはるか北。 人の住まえる北限を超えて彼ら一族の地はあった。 銀の髪と蒼き瞳。 氷の神の化身のような姿を持ちながらも炎を操るという特有の力ゆえに、彼らはこう呼ばれる。 『氷炎の民』と。 ----------- 王国ファンタジア【氷炎の民】外伝。 【氷炎の民】の日常生活と恋、そして……。 -----------

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop