今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
どこだろうと思いながら車窓から流れる景色を見つめていると、車はやがてオフィスビル街へと入っていく。
路上パーキングへと駐車をすると、怜士はすぐに助手席へと回り沙帆に手を差し出した。
出された手にどきりとしながらも、そっと手を重ねる。
深い意味もなく、〝仲睦まじい婚約者〟を演じているだけと頭ではわかっているものの、毎度緊張を高めてしまう。
手を繋いで歩きだしてから窺うように怜士を見上げてみると、やはり沙帆のように特に何かを感じている様子は見受けられなかった。
「えっ、ここ、ですか?」
怜士が手を引き向かっていく場所に、沙帆は思わず声を上げる。
オフィスビルが多く建ち並ぶその一角の、交差点の角一階。
ブランドロゴを掲げ、ガラス張りの入り口の横には、外国人モデルがアクセサリーを身に付ける大きなパネルが目に入る。
「エンゲージリングをまだ手に入れてなかったからな」
「エ、エンゲージ、リング……!」