今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
最後までご丁寧にお見送りを受け、二人はブランドショップをあとにした。
店を出てすぐに怜士に手を取られ、駐車した車まで連れていかれる。
西に陽が落ちてきた空は、オレンジ色の光を街に落としていた。
十一月が迫り、日もだいぶ短くなってきている。
「あの、ありがとうございました」
車を出した怜士に、沙帆は改めて礼を口にする。
「必要なものとはいえ、高額なものを購入していただいて……」
お互いの事情での政略結婚で、必要があって購入するものだからと、沙帆はこっそり怜士に「私も一部出します」と申し出ていた。
しかし、即答で「必要ない」と返され、話は終了した。
「気にすることじゃない。婚約したら、儀式の一つだからな」
(婚約したら、か……)
現実に気付くまで、沙帆は有り得ない錯覚に陥っていた。
繋いだ手を引かれて入るジュエリーショップ。
ガラスケースを前に背中に添えられた手と、「どんなのが好き?」と囁いた声。
切れ長の綺麗な瞳が、輝くリングに注がれているのを目にしたあの瞬間――。
その一瞬一瞬に自分の立場を忘れ、沙帆は自分が怜士の本物の婚約者のような夢をみていた。
しかし、〝小道具の一つ〟という一言でその夢はパチンと醒めた。