今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~


こんな場所にエスコートされて、つい〝そういう錯覚〟に陥っていた。

だけど違う。

このエンゲージリングは、偽の婚約のために必要なもの。

怜士の『小道具の一つ』という言い方に、肩の荷が下りていくような思いだった。


「そっか……そう、ですよね」


だけどそれと同時に、虚しいような、悲しいような、複雑な想いが胸を覆っていく。

一人落ち着かない気持ちになった自分に嫌気が刺した。


「では……シンプルなものにします。この、あまり石の大きくないもので」


エンゲージリングが恐れ多い、だとか、こんな高価なもの、だとか、そういう〝本物の婚約者〟が感じる感情は自分には不必要であること。

沙帆はそれに気付かされて、淡々と商品選びに専念する。

戻ってきた女性スタッフに促されて、奥の席へと案内されていった。

< 153 / 247 >

この作品をシェア

pagetop