今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
遠慮なく掴まれた肩を揺すられて、沙帆は身体を捩ってその手から逃れようと試みる。
しかし、がっちりと沙帆の細い肩を掴む指は、食い込むほどの力が込められていく。
「そうかもしれない……だけど、だけど私は、怜士さんのことが好きだから――」
他の人なんて考えられない。
例え、未来のない婚約だったとしても、沙帆はとっくに怜士のことを想い、どうしようもないくらい好きになってしまっていた。
気持ちを口に出してしまうと、想いはどんどん加速していく。
解放してくれと言わんばかりの目で謙太郎を見つめていると、彼の視線が沙帆の背後を捕え、驚いたように固まった。
「人の婚約者になんの用だ」
そんな声が聴こえてきたのは、謙太郎の見せた反応とほぼ同時だった。
沙帆の肩に触れる謙太郎の手から取り返すように、怜士は沙帆の手を掴んで自分の腕の中に閉じ込める。
ドキンと、沙帆の鼓動が大きく音を立てて震えた。