今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
怜士の冷静な反論に、謙太郎は一瞬怯みを見せる。
しかし、負けじと「だって、そうだろう」と声を張り上げた。
背にあった怜士の手がするすると沙帆の身体のラインを下り腰に触れる。
自分へと密着させるように、怜士は沙帆を抱き寄せた。
「悪いが、俺の方が彼女に惚れている」
(え……?)
「わかったら、今後一切、俺たちの前に姿を見せないでもらいたい」
一切の迷いなくそう言い放った怜士は、沙帆を腕に抱きその場を立ち去っていく。
そのまま祝賀会会場を通り過ぎて、エレベーターホールへと入る。
どこに行くのだろうかと思いながらも、沙帆は自分の鼓動の暴走に俯く。
『俺の方が彼女に惚れている』
そんなこと嘘でも言われたら、天にも舞い上がる気持ちだった。
あの場で謙太郎を黙らせるための言葉だったとは重々承知。
でも、怜士を想う沙帆は嬉しくてたまらなかった。