今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
「それなら、とりあえず俺と一緒になることにすればいい」
「……は、はぁ⁈」
「そうすれば、その間はご両親も静かだろう。どこかの医者たちとまたお見合いをさせられることも一旦はなくなる」
今度は一体何を言い出したのだろうかと、沙帆は開いた口が塞がらなくなってしまった。
そんな沙帆の様子に構うことなく、怜士は微笑を浮かべる。
しかし、沙帆は更に黙っていられなくなった。
「と、とりあえずって、そんないい加減な結婚の仕方あります⁈」
「まぁ、俗に言う政略結婚っていうのに近いかもしれないな。お互いの家の利益のため、当人たちの気持ちは別としてっていうやつだ。でも、おたくは先の見えない見合いから解放されるし、俺も世間体が良くなる。何も悪い話じゃない」
「そんなの……」
おかしな話のはずなのに、あまりに淡々と語られて、まともな話をされているような錯覚に陥る。
不敵な笑みを浮かべた怜士は、どういうつもりか沙帆の顎にそっと触れた。