今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
逃げるように部屋を出てエレベーターに乗り込んだ沙帆を怜士は追いかけてこなかったけれど、マンションロビーに出ると黒服のコンシェルジュの男性が沙帆を待っていた。
「お送りのタクシーを用意しています」と言われ、正面エントランスとは別の出口から繋がるポーチに案内された。
どうやら沙帆が部屋を飛び出していってから、怜士がコンシェルジュに手配したのだろう。
自宅まで乗せてもらっても、運賃を請求されることもなかった。
「ふつつか者の娘ですが、どうかよろしくお願いします」
三人が話しているのを前にぼんやりとしていると、いつのまにか千華子が話を締めるような言葉を口にしていた。
「えっ――」
「こちらこそ、至らない点もあるかと思いますが、必ず沙帆さんを幸せにすることをお約束します」
不覚にも、両親に向かって真剣にそんな宣言をした怜士を目に、沙帆の心拍は乱されてしまう。
良嗣は力強く頷き、千華子は「まぁ!」と嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。
仕上がった和やかな雰囲気に、沙帆は茶々を入れることなんかできなかった。