今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
「あら沙帆、お帰りなさい。待っていたのよ」
部屋へと入ってきた沙帆に、三人の視線が集まる。
怜士は「こんにちは」と沙帆に紳士的で感じのいい笑みを向けた。
「沙帆、こっちへ来て、掛けなさい」
良嗣に促され、沙帆は黙って三人が掛けるソファーへと近付く。
近いうちに両親に挨拶に行くと言われていたけれど、まだ三日しか経っていない。
今日、怜士がこうして自宅に訪れたことに驚きしかない。
「ほら、座って座って」
立ち上がった千華子が沙帆の腕を取り、怜士のとなりへと掛けさせる。
並んで座った二人を見て、良嗣と千華子は満足そうな笑みを浮かべた。
「私たちも、揃って顔を合わせることなかなか難しくてね。でも、二人で会って話を進めていたなんて思いもしなかったわ」
どうやら沙帆が帰ってくるまでの間に、大体の話は終わっているようだった。
ぎょっとして横の怜士へと思わず顔を向ける。
その視線を受け、怜士は沙帆へと柔和な笑みを見せた。
両親を前にしているにもかかわらず、この間の夜のことが鮮明にフラッシュバックしてきてしまう。
突然奪われた唇は、しばらく沙帆の体温を上げて混乱をさせていた。