からめる小指  ~愛し合う思い~
千尋の手は……

夏だというのに………冷たかった。

覚悟はしていても、やはり緊張しているのだろう。

だが………俺も千尋に負けないくらい緊張している。

もちろんデートを自粛するという話しもだが……

俺は樹と違い、もう1つ伝えたいことがあるのだ。




柵に寄りかかり千尋を呼ぶ。

「尋、おいで。」

キレイな海を撮ることもなく、うつ向かせてしまったのは……俺だ。

あれ程、同じ雲を撮ってたのにな。

「伊藤 千尋さん、結婚してください。」

「………えっ。」

ようやく顔を上げた千尋の額にキスをして……

「………というのは、もう少し先だけど
俺だけのものになってくれる?」と言って千尋の左手をとる。

薬指にはめたリングは……樹に感謝する程ピッタリだった。

「卒業したらもう一度きちんと言うよ。
指輪も………3ヶ月分な!
今日のは……予約。
これから卒業までは……外では彼氏を止める。
もちろん、学校でも。
樹も言ったけど、千尋とはぁちゃんの頑張りを無駄にしたくないからね。
教師として行動すると………千尋達には淋しい思いもさせると思う。
ヤキモチを妬く場面もあるはずだ。
なるべく泣かさないよう気を配るけど、一人一人の相談を聞くこともあるし
去年尋がそうだったように……クラス委員とは二人になることもあると思う。
メールや電話は……いつでも取れるようにしておくし
隣にいるからいつでも来ればいい。
絶対…………一人でためないこと。
プライベートは尋の彼氏だし、半年もすれば尋の家族だから。
半年だけ……学校とデートを我慢してください。
そうして………春には家族になろう。」

泣き虫千尋は……やっぱり泣いている。

ちゃんと理解出来たのか?

それでも左手の薬指には、リングが光っているから大丈夫だろう。

女子高生に『俺だけのものになれ』『春には家族だ。』は……

中々言わないだろう。

………だけど、千尋には必要だ。

『好きだ。』『愛してる。』だけだと………千尋の不安は取れない。

愛情に自信のない千尋は……ムチャをするから。

我慢して体調を崩すか、俺の想像を越える行動をする。

「もしも、家族のことで心配や不安があったら………
数学準備室か、生徒指導室においで。
この間のように………一人で行動するなよ。」

十分釘を刺して、これからの半年を約束した。
< 59 / 126 >

この作品をシェア

pagetop