からめる小指  ~愛し合う思い~
あれから千尋は、右手でしか手を繋がなくなった。

左手は、光にかざしてはキラキラ光る指輪を眺めている。

「尋、取り合えずのだから……あまり見るな。
安物だから恥ずかしい。」

半年後に、きちんとした物を贈ろうと思っているから

子供騙しの安物しか買ってない。

「嫌~」

淋しさを和らげるための策として、半年……前倒しで贈ったが

思った以上に喜んでくれた。

「卒業したらお嫁さん?」

「もちろん直ぐには無理だぞ。
尋は未成年だから、親の許可もいるし……
大学だって行き始める。
だけど………プロポーズはするつもりだ。
それを受けて、尋の気持ちが固まったら…………返事をしてくれたらいい。
大学を卒業してからだって、直ぐだって………尋に任せる。
とにかく、尋と家族になるんだって覚えといて。
卒業までは、淋しいこともあるけど………
樹と協力して、なるべく二人が淋しさを感じないように頑張るから
はぁちゃんと仲良く乗り越えて。」

「うん、分かってる。
はぁちゃんもそうしようって言ってたもん。」

「それじゃあ、旅行を楽しみますかぁ。
俺も尋に話すのと、指輪を渡すタイミングが気になって……水族館を損したから……。」

肩の荷が下りた。

この夏の始めに、樹と二人で話し合い伝えることにしたけど……

千尋の行方不明騒ぎと入院で、それどころではなくなった。

千尋達は、推薦が決まったというのに…………。

バレて推薦を取り消しにならないか、ヒヤヒヤしながらデートを重ねた。

話し難いからと後回しにして……。

伝えてみると…………淋しい思いはあるはずだけど

ちゃんと理解して、頑張ってくれると言った。

………もちろん、月日が過ぎると淋しさは出てくるはずだが………

俺達が結婚を考える程好きになった彼女達だ、もっと信用しないとなぁ。
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