からめる小指  ~愛し合う思い~
「足下に熱帯魚がいっぱい!
ボートの底がガラスってスゴイ!」

グラスボートの存在を知らなかった千尋は、おおはしゃぎだ。

「サンゴまで見えるよ。」

横に座った4・5歳児が、同じような事を言って感動しているのには笑える。

自然の水族館は、きっと喜んでくれると思っていたけど

想像以上の喜びに、こっちが照れ臭くなる。




昨夜、ベットの中で沢山話した。

千尋の父親に対する思いは…………誰よりも深く

それだけに、裏切りが許せないようだ。

姉ちゃんを大切にしていると、千尋の目に映る母親は………

正直、あまり関心がないみたいで……

『浮気をしているかも』と言いながらも淡々と話していた。

むしろ、姉ちゃんへの気持ちは強く

前から感じていた嫉妬や羨望の他に………依頼があるように思う。

結局、姉ちゃんが大好きなのだ。

母であり、家族の象徴であり……………居場所なのだ。

姉ちゃんを心配することで、自分の存在意義を保っているんだろう。

そろそろ姉ちゃんが恋しいのかもなぁ。

俺がその存在になりたいが………

今はまだ無理だ。

長年、一緒に生きてきた重みだから。

俺もこれから長い年月をかけて、ゆっくりとその存在にならないといけない。

それが出来た時、俺達は家族になるんだろうな。
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