桜の舞い散る頃

【始まり】

カタカタとキーボードの音だけが響き渡る室内。
「高梨君、すまんが~、この企画書のまとめを頼むよ~。」
背後からの課長の声に振り返り、差し出された書類を受け取る。
「はい。提出期限は何時でしょうか?」
課長の顔を見て、やさしい微笑みを浮かべて返事をする。
「ああ、月曜日の会議で使うから、それまでに頼むよ。」
今日は水曜日だから、金曜日の朝一で課長に確認してもらって、使用部数をコピーして綴じて準備しよう。
「それでは課長、金曜日の朝一で確認をお願いします。」
「ああ、わかった。」
課長は自席へと戻って行った。
フッーっと一つ息を吐いて、パソコンへと向き直る。
「沙耶(さや)さ~ん。」
可愛らしい声に呼ばれ顔を上げる。2歳下の奈桜(なお)ちゃんだ。
「ン、どうしたの?」
ニッコリと笑い返事をする。彼女はそばまで来ると、私の手をギャュッと握り笑顔で話す。
「金曜日の合コン一緒に行って下さい!」
「えーっ!ムリッ! ゴメンっ、本当に無理だから!」
奈桜ちゃん、私が合コンが苦手な事知ってるのに何で誘うのよ~。
「そんな事言わないで付き合って下さい!お願いします!」
奈桜ちゃんは必死に食い下がる。
「イヤイヤ、ホント無理だから!それよりお仕事しよう。ねっ、お仕事!」
< 1 / 19 >

この作品をシェア

pagetop