桜の舞い散る頃

「沙耶は、俺の事好きにはなれない？恋人としては圏外かな。」
えっ、目を丸くして、彼の目を見つめる。真っ直ぐな眼差しで私を見つめ返している。ああ、どうしよう。曖昧な事は言えないと、頭をフル回転させる。真面目に考えて答えないと、“好き”か“嫌い”かと言われると”好き“なんだと思う。でも、付き合うとなると、彼の気持ちに応えられるか解らない。私では申し訳ないと思う。私は、他の人達より恋愛経験が少ない。少ないというか、過去に恋人が居たのは二人だけだ。恋愛偏差値がかなり低い。それなのに、彼のようなハイスペックイケメンとだなんて無理。もう、正直にお話しよう。
「あのっ、お付き合いしてる人はいません。さっ、聡史さんに対しては、好きか嫌いかと言われると、好きだと思います。でも、お付き合いする事は考えた事がなかったので解りません。」
彼は沙耶を見つめて静かに言った。
「沙耶、お試しでもかまわないから、俺と付き合って欲しい。俺という男を知って欲しい。それでも、どうしても無理なら諦めるから。ダメかな。」
「でも、聡史さんの相手が私では、申し訳ないです。」
沙耶は、うつむきながら話した。