桜の舞い散る頃
沙耶って!下の名前で呼ばれるなんて!もうっ!なんなの~!
「沙耶、こっちを向いて。まずは、お互いに向き合う事から始めよう?」
まずは向き合う事から。彼という人を知っていく。
「沙耶、とりあえず座って話そう。」
彼に言われてソファーに座る。少しだけ距離を空けて隣に座る私を、ふわりと抱きしめる。
「沙耶、好きだよ。早く俺に落ちておいで。」
私が離れようと思えば離れられる。優しい力だ。でも、まったく嫌だとは思わなかった。安心できる心地良さだった。
「聡史さん、恥ずかしいです‥‥」
「クックッ、慣れてくれ。俺は沙耶を甘やかしたいんだ。可愛い過ぎて誰にも見せたくない。」
彼は楽しそうに、肩を揺らして笑っている。
「そんな事言われても、会社もあるのに。お仕事したいです‥‥」
そっと私を離し目を合わせる。
「解ってる。だから一緒に居る時だけにするから、沙耶が仕事を頑張っている事は知っている。それを邪魔する事はしない。」
彼が私を理解してくれている事が嬉しかった。
「ありがとう。聡史さん。」
素直に言葉にする事が出来た。
「沙耶、昼飯どうする?どこか食べに行く。デリバリーにする?」
「あの、私は着替えたら帰ります。」
「大丈夫。夕方に車でちゃんと送るから、昼飯付き合って。」
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