短編集 【善人のフリした悪人】
「お待ち下さいお侍殿、お犬殿。」
「・・・なんだ。」
「あなた方は命の恩人っす。
これからどちらへ?」
「・・・・鬼ヶ島だ。
鬼を成敗致す。」
「鬼ヶ島!?」
猿は爪楊枝代わりにしていた木の枝を歯茎に当てるのをやめると、桃太郎の傍まで歩み寄ります。
「ならばあっしも連れていってくださいっす。」
「・・・なぜだ?」
「鬼ヶ島に生えてる“桃”という果実。
あれを一生で一度でいいから食べてみたかったっす。」
「・・・・我らは観光に行くのではない。
去れ。」
桃太郎と犬は、猿にお構いなしに再び足を動かしました。
「チェッ。つまんないの。」