短編集 【善人のフリした悪人】
「マキタ。明日の朝、子供達に伝えてくれるかい?」
「・・・・・・・?」
「今年だけは、
子供達には“ありがとう”じゃなくて、
“どういたしまして”と言って欲しいって。」
「・・・・必ず伝えます・・。」
玄関を出て、
再びソリに乗ったトム。
最後にもう1度、
毎年通った施設を眺めた。
「トムさん。
サンタの国に帰ってもお元気で。」
「マキタも達者でな。」
手綱を握りトナカイと共に空へと飛ぶトムに向かって、
マキタは少年の眼差しでいつまでも手を振り続けた。