短編集 【善人のフリした悪人】
「・・・だから嬉しいんだぁ・・・。
使い古されてボロボロになったサッカーボールを見るのは。
部屋いっぱいに飾られた絵と、最後の1滴まで絞り取られた絵の具を見るのは。
12月になるとサンタ協会に届くたくさんの手紙は。
いつもここの子供達は私の期待以上、お腹いっぱいの夢を見させてくれる。」
「俺も・・・かつてその1人だったんですよ・・。
トムさんがくれたのは決して物だけじゃない。
リボンをほどくとき、
俺はいつも感じていました。
親に捨てられて、まるでゴミの集積場みたいな・・臭い物に蓋をするような場所に作られたこの施設の中で。
クリスマスの朝に届くこの箱は・・
なんて暖かいんだろうって・・。」
「嬉しいねぇ・・・。
サンタ冥利に尽きるねぇ・・・。」
全ての枕元にプレゼントを置いたトムとマキタは、子供達が起きないよう静かに部屋を出た。