短編集 【善人のフリした悪人】
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サンタになって48年。
孤児院を出たトムが最後に向かったのは14年前から通うある女の子の家。
道すがら、トムは初めてその少女の家に行った年のことを思い出していた。
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「リーダー・・。
これを私1人で運べというのですか?」
「大丈夫。家まで持っていってくれれば、カナちゃんの両親が手伝ってくれるから。」
「サンタになって34年になるが・・グランドピアノを運ぶのは初めてだよ。」
「トムさんも機会があればカナちゃんの歌を聴いてみるといいよ。
あの子の歌声は本当に透き通ってるんだから。」
「音楽と歌が大好きな女の子か。
分かりました、しっかり贈り届けます。」
「ぎっくり腰には気をつけてくださいね。」
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