ハイド・アンド・シーク


二次会が終わり、またみんなでぞろぞろと駅を目指す。
各々自宅へ向かう電車に乗るためだ。

ベロンベロンに酔っ払った越智さんは、有沢主任と豊谷部長によって抱えられ、そして駅のロータリーでタクシーに乗せられて自宅へ強制送還の運びとなった。

「車内で吐きませんように」と全員で笑い合う。
走り出したタクシーを見届けてから、部長が高そうな腕時計に視線を落とした。


「よし、じゃあ解散するか。女性陣はくれぐれも気をつけて帰ってくれよ。方向が同じの人は一緒に帰るように」


それに合わせて、誰々はどの電車に乗るだとかあっち方面だとか、口々に話し出した。
メトロ組や、中央線組など分かれ始める。


「京王線に乗る人いる?」

と、部長の隣にいた主任が言い出したので、私はビックリして彼を遠目から見つめた。

すると、茜が私の腕を小突く。


「菜緒、京王線でしょ?立川だっけ」

「あ……うん」

やや気後れしながらうなずくと、有沢主任が目を丸くして「そうなの?」と私に目を向ける。

「俺も立川に住んでるんだ。驚いたな。立川のどこ?」

「高松町です」

「俺は羽衣町」


思っていたよりも近い!
テンションが上がりそうになると共に、ドキドキと胸も高鳴って具合が悪くなりそうだった。

信じられない偶然。
こんなに広い東京で好きな人と家が近いとか、神様に感謝しなくちゃいけない。


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