ハイド・アンド・シーク
こうして抱きしめてもらうだけで、どことなく安心するというか、愛を感じられる。少し前までは手が触れるだけでも、心臓が大騒ぎしてたっていうのに。
私ってどれだけ求めるんだろうか、彼に。
「あぁ、でも今日は俺の部屋じゃない方がいいのかな」
「え?なんでですか?」
ぽつりとつぶやいた主任の言葉がよく分からず、肩にうずめていた顔を上げて聞き返す。
彼は吹き出すのを我慢するように、先ほどまで身をあずけていた肩を小刻みに震わせた。
「だって、我慢できないんでしょ、声」
そ、それは……、とつい言いよどむ。
「じゃあ、なるべく小さい声にします」
「あはは、分かった。期待してる」
自然な仕草で、彼の両手が私の頬を包む。
起きたてで暖まっている頬に、彼の少し冷えた手が気持ちいい。
そっと唇を重ねた。
「…………じゃあ、行ってきます」
「……行ってらっしゃい」
彼の手が離れていくのがつらくて寂しいけれど、ここでそんなことは言えるわけがない。
帰ってきたら、うんと甘えればいい。
呆れるくらい、好きって伝えてしまいそうで、胸がいっぱいになった。