僕に君の愛のカケラをください
マンションに戻り、駐車場から大量の荷物を2度に渡り運ぶ。

「おかえり。蒼真、葉月ちゃん」

玄関が開く音を聞いて、靖晃がリビングから出てきた。

「わ、ずいぶん買い込んだな?葉月ちゃん、ここにすむ気?」

「滅相もない。ちゃんと引っ越したときのことを考えて購入してます」

葉月の言葉を聞いて、一瞬、蒼真は悲しそうな顔をしたがすぐに真顔に戻った。

「靖晃さん、ジロウにミルクをやったらすぐに昼食作りますね」

葉月は、ささっと買い物してきた品物を片付け、手慣れた様子でジロウの世話をする。

そして台所に行き、買いだめした食品を冷蔵庫に整理していく。

その様子を楽しそうに眺める靖晃と蒼真は、リビングでくつろいで食事が出来上がるのを待つことにした。

「えっ?凪沙に会ったのか?」

凪沙とは、さっき蒼真と葉月がショッピングセンターで会った派手な女性だ。

蒼真が大学時代の最後の彼女。

彼女の言う通り、蒼真は誰のことも愛せなかった。

告白されて、付き合って、ほどなく別れる。

誰彼構わず、というわけではなかったし、それなりに気に入るところはあったからその子達と付き合った。

蒼真が彼女に求めるのは癒しだったが、残念ながら、そのようなタイプの女性は蒼真には近づいてこなかった。

蒼真に言い寄る女性は皆、蒼真の外見と将来性にこだわり、中身を見ようとはしなかった。

心を開けない蒼真は、デートをしても自宅には招かない。自分からは誘わない。

そんな態度に不満が募ってきた女性達は、蒼真の欠点を探して攻撃をし始める。

『奨学金で大学通ってるの?カッコいいのは外見だけね』

『どうせオンボロな家に住んでるから女性を自宅に呼べないんでしょ?』

などと、蒼真の人格とは関係ない部分まで貶めるのだ。

凪沙もしかり。御曹司である靖晃の親友と聞いて近づいてきたが、蒼真が御曹司ではないと知り、手のひらを返したように冷たくなった。

『蒼真は優しくないし、誰のことも愛せない。所詮自分がかわいいだけのナルシストよ』

それが彼女の最後の言葉だった。

"凪沙の言うことはもっともだ。誰も愛せない俺は異常かもしれない"

そう思った蒼真は、反論することもなく、凪沙と別れた。

それからは、彼女を作らず現在に至る。

蒼真は、ショッピングセンターで凪沙に言われたこと、葉月が反論した内容を靖晃に語って聞かせた。




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