僕に君の愛のカケラをください
「おっしゃってる意味が良くわかりませんが、蒼真さんが誰も愛せなかったのは、あなた方が本当に愛してあげなかったからじゃありませんか?」

ヒールのお陰で、葉月よりも15cm近く背が高くなっている女性を真下から見上げて葉月は言った。

「動物だって、本当に自分に愛情を持って接してくれる人にしか心を開きません。ましてや蒼真さんは人間ですよ?わかってます?」

葉月は可愛い鼻をスンっと鳴らして言葉を続けた。

「あなたが信じるべきは元カノたちの言葉ではなく、蒼真さん自身だったのでは?」

女性はぐうの音も出ないのか、怯んだまま言葉を発しない。

「まあ、玉の輿狙いのおバカさんじゃ、私の言ってることも理解できませんね。それに大学時代って、何年前のことだと思っているんですか?人は変わるんですよ?」

葉月の言葉と態度に呆然として立ち尽くす蒼真の腕に、葉月は腕を絡めて甘えた口調で言った。

「蒼真さん、愛するジロウが待つ我が家に帰りましょうか?ミルクの時間も迫ってるし、留守番してくれている靖晃さんにも悪いですもんね?」

ぎゅっと唇を噛み締める女性。

「ご忠告ありがとうございます。蒼真さんは、人も動物も愛せますからご心配なく。それでは、急いでますので」

葉月はカートに鶏肉と豚肉、牛肉をどんどんつめていく。

「まだ買うのか?」

葉月を優しく見つめて苦笑する蒼真は本当に嬉しそうだった。

「、、、ごめんなさい」

小さな声で呟いた女性の姿を尻目に、葉月はグングンとカートをもった蒼真ごと移動を開始した。

「さっ、次は野菜とお味噌ですよ。急がなきゃ」

そう言って笑う葉月に引っ張られる蒼真の目はもう不安に流されてはいなかった。

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