僕に君の愛のカケラをください
萌えポイント
葉月の母は、葉月を産んですぐに他界した。

元々病弱だったにも関わらず、妊娠中毒症を発症し、お産中に子癇(痙攣が続くこと)を起こしてそのままICUに入ったが助からなかった。

「多栄子は最後までお前に会えることを楽しみにしていたんだぞ」

物心ついた時から、ことある毎に父から写真と共に母の話をされ、葉月は母に胎児のうちから十分愛されていたことを悟った。

でも、友達にはいるはずの母親は、葉月のもとには帰ってこない。

その寂しさを埋めるために、葉月は、父の勤める農業大学校に通っては動物達に癒しを求めた。

しかし、動物はただ可愛いだけではない。

本能というものは、人間の打算や愚かさを瞬時に見抜き、容赦なく敵認定して排除する。

一方で心を開いたものには甘え、甘えさせてもくれる。

幼いながらも、葉月は自然の摂理や、淘汰されていく厳しさをそこから学んだ。

美智子をはじめとして、父:利信の周囲の職員・学生達は皆、実の親や兄妹のように葉月を優しく甘やかしてくれた。

だから、蒼真とは違い、葉月は誰かに甘えたいとか、甘やかされたいとかいう感情よりも、早く自立したいという思いの方が強くなっていった。

動物や大人に囲まれて過ごすうちに、人を見る目も厳しくなったが、心底、心を開いてくる人や動物にはどこまでも甘くなってしまう自分に気づいていた。

葉月は今まで3人の彼氏と付き合ったが、いずれも相手からの告白で付き合った。

友人として仲が良かったし、性格も好きだったから付き合った。

見かけが可愛らしい葉月を彼らは甘やかそうとした。しかし、甘えたいわけではない葉月の態度は彼らには素っ気なく映ったらしい。

"可愛い気がない"
"素っ気ない"

執拗に構ってくる彼氏にうんざりして、葉月は男性とのお付き合い自体に疲れてしまった。

だから、専門学校を卒業してからの5年間は彼氏を作っていない。

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