ONE〜想いは一つ〜
「やけに元気だな。中元」

佳織との話を終えた広樹が医局に戻ってきた。

「っ、本谷…お前、南條の事知ってるのか?」

広樹は、一哉の顔を見た。

「…知ってるのか、か…、佳織は幼馴染だよ。で、佳織の妹の夏帆とは今度結婚するんだ」

「お、幼馴染…って、け、結婚?そんな話してなかったじゃないか。な、拓海」

「俺も初耳。本谷…と南條さんと、そうか…」

「まぁな、大っぴらに出来る相手じゃなかったからな。色々と問題があってな。やっと、表立って話が出来るようになったんだよ」

表立って話が出来るようになったんだよと、広樹は一哉と拓海に、これまでの話をした。
佳織と夏帆が南條総合病院の娘で跡取りだと言う事を、そして佳織と結婚するように院長から言われていた事を。

「そ、そうか…そんな事があったのか…」

「あぁ、やっと院長が折れてくれな。夏帆との結婚は許してもらえたんだが…佳織が病院に戻る気ないって、黙って南條を辞めたんだよ。居場所が掴めなくて…さっき見つけて問いただした所だよ」

「おい、本谷。まさか、南條を病院に戻すつもりなのか?」

「ん?当たり前だろ。自分の病院だぞ、継ぐ気はないって言ったけれど、関わってもらわないと。俺だって、経営と病院内の統制なんて、両方出来ないからな。佳織は辞めないって言ってたけど、俺は是が非でも連れて帰るつもりだよ」

広樹の言葉に一哉も拓海も返す言葉が見つからなかった。
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