恋愛に無関心の院長が恋に落ちるわけがない
「えっと、ほら、そう。尊敬できる明彦にも、愚痴りたくても愚痴れないこともあるでしょう。非常識なオーナーみたいなのは」
「はい」
「そういうときは、私がいるわ」
「わかりました? 香さんに愚痴りたくてウズウズしてました」
「ほら、そうでしょう。吐き出したくもなるわよね」
「はい」
香さんが頬を緩ませて、嬉しいって顔が言っている。
「まいったわよね。戒めに時間外診察料金、がっつり高額いただいたわよ」
レジを軽く、ぽんぽん叩く香さんの逞しい笑顔。
「これで時間外に緊急性もないワクチンで来院が、なんて馬鹿げたことか身に染みるほど、思い知ったことでしょう」
「香さん、商魂逞しいです」
「当然よ。いちいちワクチン注射で時間外で来られたら、本当に緊急で来院した患畜の命を落としかねない。そのために高額に設定してるんだから」
経営者って、お金儲けだけで料金設定を考えているわけじゃない。
助かる命を無駄に落としたくない気持ちも、料金に考慮している。
「本当に急患と重ならなくてホッとしたわ」
香さんの心からの安堵の声に、私も同意のしるしに何度も大きく頷く。
命を助けたい想いが強いから、何事もなくて本当によかった。
緊急を要するほどの症状でもないのに、平日は忙しいからとか、夜は待たなくてすむからって自分の都合で、休日や夜間に受診するオーナーは小川にもいた。
もしかして保科にもいるの? ノンネのオーナーもなの?
一刻を争う急患の治療に支障をきたす恐れがある。
緊急性があって、やむを得ない場合以外は決められた診察時間内に来院してほしい。
その他の安易な時間外の受診は慎むのが正しい判断でしょ。受診するならマナーとルールを守ってよ。
「川瀬さんと話してすっきりした、ありがとう」
「私も香さんに聞いていただけて、心が晴れました。ありがとうございます」
香さんに挨拶して、上がろうとした。
「川瀬さん、ひとつだけ聞いて」
わざわざ呼び止めて、なんだろう。
「時間外で、しかもワクチンでも受け入れたのは明彦なのよ。今までは、お断りしてたの」
その意味は?
「マナーを守れないオーナーでも受け入れるのは、明彦はあなたを信頼してるから。もし、この状況で急患が来院しても川瀬さんなら自分といっしょに乗り切る。明彦が、そう信じてるからなのよ」
「院長が」
信頼されていることが嬉しかった。抑えきれない笑顔が溢れる。
「大丈夫です、私なら院長と二人で乗り切ります」
知識と経験と助けたい気持ちさえあれば、不可能なことはない。胸を張って言える。
「頼もしいバディね。これからも、よろしくね」
「任せてください」
香さんの心配りと思いやりに、私の心の中に残る、時間外受診のオーナーのことは少しずつ消えていきそう。
「あなたが、あまりにも真剣に明彦を庇ってくれるから、嬉しくてつい話しちゃった。明彦には口止めされてたけど。だから、明彦には内緒ね」
「はい、約束します」
待機室を通って院長にも挨拶した。あまりにも嬉しくて、私の顔は笑顔だったのかな、院長ったらぽかんとしていた。
「はい」
「そういうときは、私がいるわ」
「わかりました? 香さんに愚痴りたくてウズウズしてました」
「ほら、そうでしょう。吐き出したくもなるわよね」
「はい」
香さんが頬を緩ませて、嬉しいって顔が言っている。
「まいったわよね。戒めに時間外診察料金、がっつり高額いただいたわよ」
レジを軽く、ぽんぽん叩く香さんの逞しい笑顔。
「これで時間外に緊急性もないワクチンで来院が、なんて馬鹿げたことか身に染みるほど、思い知ったことでしょう」
「香さん、商魂逞しいです」
「当然よ。いちいちワクチン注射で時間外で来られたら、本当に緊急で来院した患畜の命を落としかねない。そのために高額に設定してるんだから」
経営者って、お金儲けだけで料金設定を考えているわけじゃない。
助かる命を無駄に落としたくない気持ちも、料金に考慮している。
「本当に急患と重ならなくてホッとしたわ」
香さんの心からの安堵の声に、私も同意のしるしに何度も大きく頷く。
命を助けたい想いが強いから、何事もなくて本当によかった。
緊急を要するほどの症状でもないのに、平日は忙しいからとか、夜は待たなくてすむからって自分の都合で、休日や夜間に受診するオーナーは小川にもいた。
もしかして保科にもいるの? ノンネのオーナーもなの?
一刻を争う急患の治療に支障をきたす恐れがある。
緊急性があって、やむを得ない場合以外は決められた診察時間内に来院してほしい。
その他の安易な時間外の受診は慎むのが正しい判断でしょ。受診するならマナーとルールを守ってよ。
「川瀬さんと話してすっきりした、ありがとう」
「私も香さんに聞いていただけて、心が晴れました。ありがとうございます」
香さんに挨拶して、上がろうとした。
「川瀬さん、ひとつだけ聞いて」
わざわざ呼び止めて、なんだろう。
「時間外で、しかもワクチンでも受け入れたのは明彦なのよ。今までは、お断りしてたの」
その意味は?
「マナーを守れないオーナーでも受け入れるのは、明彦はあなたを信頼してるから。もし、この状況で急患が来院しても川瀬さんなら自分といっしょに乗り切る。明彦が、そう信じてるからなのよ」
「院長が」
信頼されていることが嬉しかった。抑えきれない笑顔が溢れる。
「大丈夫です、私なら院長と二人で乗り切ります」
知識と経験と助けたい気持ちさえあれば、不可能なことはない。胸を張って言える。
「頼もしいバディね。これからも、よろしくね」
「任せてください」
香さんの心配りと思いやりに、私の心の中に残る、時間外受診のオーナーのことは少しずつ消えていきそう。
「あなたが、あまりにも真剣に明彦を庇ってくれるから、嬉しくてつい話しちゃった。明彦には口止めされてたけど。だから、明彦には内緒ね」
「はい、約束します」
待機室を通って院長にも挨拶した。あまりにも嬉しくて、私の顔は笑顔だったのかな、院長ったらぽかんとしていた。